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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第5章 狼の本性

嬉しさついでに勇気を出して
「先輩は本が好きなんですか?」
自分から話を切り出すことに。
「……本? 何のことだ?」
「だってずっと読んでますし、それ…その本です」
「ああ…」
何故か疑問形で返されたので戸惑ったが、それでも花菜はめげなかった。
「わ、わたしも読書が好きなんです。中学の時はいつも図書室に入り浸ってました」
「……」
「今は家の近くに古本屋さんがあるから、学校から帰ってからよく行きます! そこは立ち読みOKで、それに100円とか、80円とか…っ、すごく安いのも売ってあって…」
「……」
「それにわたしのお兄ちゃんも読書が好きなんです。あ、って言ってもお兄ちゃんは大学の英文科に通っていて、読んでいるのも英語の文学作品だからわたしには読めないですけど…──」
「…」
「──ッ、あ…」
普段から伊月以外の人間とコミュニケーションをとらない彼女にしては、十分に健闘したほうだろう。
しかし
“ だから、なんだ ”
そう言いたげな不破の視線に晒されて、さすがに次の言葉は引っ込んだ。

