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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第5章 狼の本性

“ ああもう何言ってるんだろうわたし…!! ”

怖さと恥ずかしさが同時に襲う。

彼に遅れをとらないように足だけはちゃんと動かして、花菜はたまらず俯いてしまった。


…だが、不破は彼女を見下ろしたままだ。


「本が好きならこれをやろうか」

「…っ…これ?」

「この本だ。俺はもういらない」

そして意外にも、彼女の話を聞いていたらしい。

読書が好きだと言う彼女に、手に持つ本を差し出したのだ。

「……!」

それは文庫本で

歴史物っぽい表紙の…小説、だろうか。

自分の顔の高さに差し出されたそれを、花菜は寄り目気味にまじまじと見た。

「え!?」

「欲しいなら、やる」

「でも…!! 不破先輩だってこれを読んでる最中じゃあ…!?」

「……半分読んだからな。そろそろ飽きた」

彼の言うことは花菜に理解できなかった。

…半分? 飽きた?

あんなに集中して読んでいたのに?

“ あ、もしかしてわたしが気を遣わないように嘘をついてるとか…? ”

それならそれで、嬉しいけれど…。


花菜は俯いた顔を上げずに、代わりに口角を上げていた。

自然と零れてしまう笑みを不破に見せるわけにいかなかった。

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