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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第5章 狼の本性
「それは嬉しい──ですけどっ、もらうのは申し訳ないです。その本は不破先輩の物ですから」
声まで笑ってしまわないように、気を付ける。
「──…ただ…もし、良かったら」
その代わり彼女の声量はどんどんしぼんでいった。
勇気をふり絞れば、それだけ、それに反比例するように──。
「良かったら、先輩がひと通り読み終わった後に貸してもらえたら……嬉しい……です」
「……、そうか」
そんな状態でなんとか、舌を動かして。
きちんと言えたことにかえって驚く花菜は、自分自身の成長を感じていた。
それから会話が途絶えた二人。
大きな電気屋の前を通りすぎて、その隣のビルの一階にある、コンビニの前にさしかかる。
歩くスピードは…変わらず一定だった。
ドサっ!
「──!?」
その時、不破が手に持っていた本を──
彼女がもらえないと断った本を、コンビニの入り口に設置されたゴミ箱の中に放り込んだ。
「‥‥!」
──それはあまりに唐突すぎた。