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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第5章 狼の本性
「え‥‥いま‥‥」
花菜の足が止まる。
「せ、先輩? 本が」
「捨てたんだ、文句があるのか?」
「どうして…!?」
『燃えるゴミ』と書かれたボックスの穴に消えていった文庫本。
花菜は唖然としていた。
まるで食べ終えた菓子の袋を捨てるような手際だったが、そもそも本はそんな扱いをする物ではない筈だ。
無料配布されている求人冊子でもなければ、街中で手渡されるチラシとも違う。
れっきとした売り物で
彼はそれをわざわざ購入し、こうして…今の今まで読んでいたのに。
「もう飽きたと言っただろう」
「でもこんなあっさり捨てなくても…!! 普通もったいないとか思いますよね?」
花菜をからかうためだとしたら、笑えない冗談だ。
「気にするな──…どうせ盗品だからな」
「とうひん?」
「そいつは本屋で盗んだやつだ。一昨日」
「……!?」
笑うどころか彼女は青ざめた。