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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第5章 狼の本性
「盗んだって‥‥誰が…──」
「…俺だけど?」
むしろ冗談であってほしい。
これが彼なりのブラックジョークなら、できないとは思うが一生懸命顔をひきつらせて笑う努力をするだろうに。
今の花菜の目はゴミ箱の穴に吸い寄せられていた。
暗い…黒い穴。
中のゴミは、この角度からは見えない。
「止まるな、行くぞ」
立ち止まって動かない彼女の手を、不破が掴む。
そして彼女を連れて歩き出した。
花菜は手を引かれるまま彼に従い、コンビニを通りすぎた。
手を掴まれて、隣を歩く──。
これがほんの数分前の出来事だったなら、彼女はどんな気持ちになっただろうか。
残念なことに今の彼女に、うかれる余裕はない。
青ざめた顔も戻っていなかった。