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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第5章 狼の本性
そんな彼女の様子を不破はチラリと確認したが、気にすることなく歩き続ける。
武宮高校の最寄り駅に行くかと思いきや、その手前で道を曲がり、高架の下を横切る。
その高架を境に周囲の雰囲気が僅かに変化したけれど、もちろん花菜は気付かなかった。
車道の幅が狭くなり、通り沿いには飲み屋が増え…人の数が減る。
その道を進んだ先のビルに、不破は花菜を連れて入った。
少し古めのビル。エレベーターは止まっている。ガラス張りの一階はテナントが出ていったままの散らかった状態で、ここが空きビルであることを示していた。
不破は無言で階段を上る。
手を引かれる花菜も同じだった。
カツ カツ カツ
行き着いたのは三階──
ギィ・・・
空きビルにも関わらず、扉に鍵はかかっていない。
「──…ああ? ンだよ、不破か」
「誰連れてんだ?」
そこにはすでに先客がいた。