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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第6章 助けて…お兄ちゃん
それを伊月が指摘するより先に、店員のほうが気付いて謝ってきた。
その女の店員は、常連である彼の顔を覚えていたのだ。
「すぐに新しいのを淹れ直します」
「お願いします。僕がそれを飲めたらいいのですが…甘いのがあまり得意じゃなくて。ごめんなさい」
「とんでもないです! こちらのミスですから」
「でも勿体ないな…。よかったらそれは貴女が休憩がてら飲んで下さい。ちょうど今は他のお客さんが少ないみたいですし……、ね?」
怒ったり嫌な顔をするどころか、伊月は慌てる相手を気遣った。
そうやって彼に微笑まれた店員は今にも溶けそうな表情をしている。
数秒ほど停止した後──いそいそとカウンターに引き返した。
「──…さて」
再びできた隙間時間。
伊月は椅子の背もたれに提げているリュックから、束になった郵便物の封筒と、小包をひとつ取り出した。