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それを、口にすれば
第2章 一年に一度の言葉
何かを言おうとするものの、ただドキドキとするだけで何を言いたいのかも分からない。
それは名残惜しいような、不思議な気持ちだった。

そんな優雨の気持ちを知ってか知らずか……

「週末、楽しみにしていますよ」

結城はそう静かに告げる。
その声も、その微笑みも、やはり魅力的だったが……先ほどまでとは別人のような妖しさも秘めていた。

(胸が、苦しい……)

何も返せない優雨の耳元に結城の唇が近付く。
そして、触れるか触れないかの距離で……
ここ数年誰も言ってくれなかった、その言葉を囁いた。

「お誕生日おめでとうございます……優雨さん」

立ち尽くす優雨を残し、結城は微笑みを浮かべたまま隣室に戻っていく。
その後ろ姿を見送ったまま、優雨はしばらくその場を動けなかった。






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