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それを、口にすれば
第12章 被虐の味
悶絶する良介の様子を横目に観察しながら、理沙子はわざと庭木を越え、大きく迂回して自分たちの客室の風呂場へと戻る。

途中、抱き合うように激しくセックスする結城と優雨の姿が見えたが、膝や手の平の痛み、そして下腹部痛に耐えながら四つん這いで歩く良介は気が付いていなかった。

優雨も目の前の相手しか目に入っていない様子だったが、結城に限ってはこちらのことにも気付いているに違いない。

(馬鹿な夫婦……)

品が無く頭の悪い……情けない夫と、純情ぶって人の旦那に恋する表情を見せる妻。
特にあのメス犬には本当に腹が立つ。

ただの玩具に過ぎないくせに……。

それに対して、自分たち夫婦はいくつも上のステージにいる人間なのだ。
そう、こんな連中を本気で愛するわけはない……。

〝特別〟だなんて……そんなこと、あってはならないのだ。
昔結城が大切にしていたあの女だって、最後には結局こちらの言いなりだった……。

風呂場に到着し良介に向かって風呂桶を差し出すと、潤んだ瞳でうやうやしくそれを抱え込む。

理沙子にとっては見たくも無いものだし、後始末が大変だからその準備に過ぎないのだが……良介にとっては何もかもがプレイの一部になってしまうようだ。

「あ、あの……」

「なあに?」

「あ、足を……いいですか」
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