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それを、口にすれば
第16章 愛しい名前
「結城さんは違う……」

「どう違うの? あんたと同じ側の人間だって言うの? 思い上がりもいいところだわ! 私たちとあんた達はステージが違うの。ほら、あんなことされておいて……さっきまで感じまくって涎を垂らしていたじゃない」

「やめて……」

「ねえ、何回エクスタシーを感じた?」

「やめてえ!!」

頭を抱え込む優雨に、理沙子の容赦のない言葉が突き刺さる。

「あんたのイキ顔は結城にちゃんと送っておいたから……でも返事もないわ。きっと幻滅しちゃったのね……目が醒めたんだわ。それが答えなのよ!」

送ったとは……先ほどのまでの行為の動画を撮影されていたのだろうか。
優雨は目の前が真っ暗になった。

結城は今頃、海外で仕事をしているところだろう。
もしこの事態に気付いたとしても間に合う筈がない……それに、幻滅されてしまったとしても当然だ。
そして目を醒まして……?

だとしたら、自分も夢から目を醒ます時がきたのだ。

「ああっ……ごめんなさい……結城さん……ごめんなさい……」

強く頭を振ると、打った場所がまだ微かに痛んだが……もう構わなかった。

「その汚い口で旦那の名前を呼ばないでくれる? そしてもう二度と……」
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