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それを、口にすれば
第18章 エピローグ


結城とはもう会わないこと――
それが、優雨なりのけじめだった。


そして月日が経ち……優雨は今日、二十九歳になる。

全てが始まったあの日からちょうど一年。
色々なことがあり過ぎて、あれからまだ一年しか経っていないなんて信じられない思いだった。

この一年、本当に色々なことがあった。

優雨の周りの全てが変化したが、それでも誕生日にはやはりあのシナモンケーキを焼くことにした。

「お母さん、ありがとう……」

今年もそう、口にしてみる。

いま間借りさせてもらっている弟の部屋には、大きなオーブンレンジがない。
その為、今年は初めて炊飯器を使ってケーキを焼いてみたが、部屋にはいつもと同じ甘くスパイシーな香りが広がっていた。

でも、今年は生クリームを添えることはやめておこう……。

「体重増えすぎだもんね、先生に怒られちゃう」

ゆっくりとさすりながら、優雨は自らの腹部に話し掛ける。

大きく膨らんだワンピースの下には、新しい命が宿っていた。

あんなに待ち望んだ妊娠……。
しかし、それを知る瞬間は、優雨が昔から想像していたのとは全く違う形で訪れた。






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