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それを、口にすれば
第18章 エピローグ
あの、ショーが行われた日……
アフターピルを処方してもらう為に訪れた婦人科で聞いたことを、その瞬間の自分を、優雨は今でもはっきりと思い出すことが出来ない。

あまりにもショックと混乱が大きかった。
でも、確かに告げられたのは……自分が妊娠初期であるということ。

あの忌まわしいショーから、優雨の身体を護ってくれたのは小さな、小さな命。

――誰の子ども……?

後から落ち着いて考えれば、時期的に結城の子以外に考えられなかったが……一次的なパニックに陥る。

でも、それも一瞬で。
お腹に手を当ててみると、授かったのは結城の子だという直感に包まれる。

あの、温泉宿で……。
あの、幸せだった日に。

けれど優雨は、診察室の外で待っていてくれる結城にすぐに伝えることは出来なかった。

〝子どもができたの!〟
〝おめでとう!〟
そんな風に単純に歓迎できる状況では無かった。

結城の知人だという婦人科の先生も、妊娠の事実を誰にも言わないで欲しいという優雨の望みを聞いてくれた。

そして結果的に、あの時結城に打ち明けなくて良かったと優雨は思っている。

あの後すぐに、理沙子が自殺未遂騒ぎを起こしたのだ……。
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