この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
それを、口にすれば
第2章 一年に一度の言葉
お持ちくださいとだけ短く伝え、玄関に向かう。
暖房の効いたリビングから廊下に出ると、一月初旬のひんやりとした空気が優雨を包んだ。
「寒い……」
薄手のニットにタイトスカートという恰好でこのまま表に出ればもっと寒いに決まっている。
カーディガンを取りに戻ろうか……とも思ったが、長く話すつもりのない優雨はそのまま出ていくことに決めた。
急な来訪者があっても恥ずかしくない服装をしているのは、口うるさい夫を持って助かる数少ない点だったが、この家に訊ねてくる人など殆どいない。
引越の挨拶だって、今までにして来た人はいなかった。
しかし、それは優雨にとってはどうでもいいことだ。
どうせ近所付き合いなどさせてもらえないのだから……。
そんなことを考えていると、また欝々とした気持ちになってしまう。
早く切り上げてしまいたい……そう思いながら、優雨は俯き加減にドアを開けた。
暖房の効いたリビングから廊下に出ると、一月初旬のひんやりとした空気が優雨を包んだ。
「寒い……」
薄手のニットにタイトスカートという恰好でこのまま表に出ればもっと寒いに決まっている。
カーディガンを取りに戻ろうか……とも思ったが、長く話すつもりのない優雨はそのまま出ていくことに決めた。
急な来訪者があっても恥ずかしくない服装をしているのは、口うるさい夫を持って助かる数少ない点だったが、この家に訊ねてくる人など殆どいない。
引越の挨拶だって、今までにして来た人はいなかった。
しかし、それは優雨にとってはどうでもいいことだ。
どうせ近所付き合いなどさせてもらえないのだから……。
そんなことを考えていると、また欝々とした気持ちになってしまう。
早く切り上げてしまいたい……そう思いながら、優雨は俯き加減にドアを開けた。