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それを、口にすれば
第2章 一年に一度の言葉
ドアを開けると、目の前にはスーツ姿の背の高い男性が立っている。
そしてモニター越しには気付かなかったが、その隣にはスラリとした、同じく背の高い女性が並んでいた。

「妻の理沙子でーす。初めまして!」

女性はそう言って、いきなり優雨の手を両手で挟み、強く握ってくる。
優雨は男性と向き合う前に、一瞬で彼女に注意を奪われていた。

「あっ……え……初めまして」

戸惑う優雨のことなど気にも留めない様子で、結城理沙子はぶんぶんと手を揺らす。
彼女は、ブラウンのショートヘアーが良く似合う、とても整った顔立ちの美人だった。
美人ではあるが、いささか奔放な雰囲気のある女性だ。

引越しのためだろうか……白いシャツにスキニージーンズというラフな格好なのに、その長い手足も手伝ってかまるでファッション雑誌から飛び出して来たみたいにキマっている。

その姿を見て、きっと見た目も中身も自分とは正反対の女性なのだろうと優雨は直感していた。

真っ赤なルージュを引いた理沙子が、華やかな、でも屈託のない笑顔を見せる。

きつめのメイクだがそれがよく似合っていて、メリハリのある美しい顔立ちを一層引き立てていた。

(こんなに綺麗なひと、見たことない……)

優雨は思わず見惚れていた。
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