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それを、口にすれば
第6章 気持ちが、あるから
「理沙子さんの朝飯はなあ、すげえ旨いパンが出るんだぜ。ジャムがいくつも並んでて、好きなだけつけていいとか気前良いこと言ってさ。なんとかっていう高そうな紅茶も出るんだぞ。お前とは違って、理沙子さんにはああいうセレブな感じが似合うよなあ」

テーブルの上から良介に視線を移すと、その顔には意地の悪そうな笑いが浮かんでいる。

以前から、仕事で気に入らないことがあったりすると、良介は優雨に嫌味を言ってストレスを発散するようなところがあった。
それが、最近酷くなっている気がする……。

もともと結城に対しての劣等感のようなものを隠しきれない良介だったから、もしかすると優雨との仲に嫉妬しているのかもしれない。
妻である優雨には……いや、結城や理沙子の目にもそれは明らかだと思う。

更にあの日、見たことも無いほど結城に感じさせられている妻を目の当たりにして良介は確かに悔しそうだった。
それが最近の意地の悪い態度に繋がるのか……。

無理な話かもしれないが、そうならそうと言ってくれたらいいのに……と思う。
やきもちだと知ったなら、優雨も優しい気持ちになれるかもしれない。

……これ以上夫を嫌いになるのが怖かった。

「なんだよその目は。なんか言えよ」

「……パンが好きになったのね」

「たまにはいいって話だよ。しみったれたものには飽き飽きだからな」

また自分と理沙子を比べているのだろう。

そう思い、優雨は憂鬱になった。
もともと自分に自信の持てない優雨は、良介が事あるごとに理沙子を賞賛することを辛く感じていた。
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