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伝わらない想い
第9章 伝えたい想い
最初に陸がペンを走らせた。
ペラペラでカサカサで少し書きにくそう。

そして、私の番。
少しドキドキしながら陸の隣に自分の名前を書く。

こんな紙切れ1枚で、これを役所に出せばその瞬間から夫婦になるって...どういう仕組みなんだろう。

家族を作るって...どういうことなんだろう。

告白をして、付き合って、結婚したらゴール?

いや、結婚はゴールではなく新しいスタート...になるんだよね。

こ難しいことが頭の中を過ぎる。

「ありがとうございます」
茜が律儀に頭を下げた。

「いやいや、これくらい」

「明日は楽しみにしてる」

「とうとう明日か...」

「じゃあ、私は今夜はもう帰りますね」

「明日はお願いします」と付け足して、茜はお店を出ていった。

結婚前夜。
彼女は何を思って、どのように過ごすんだろう...。

よく聞くように、両親に『今までお世話になりました』的なことをするのかな。

「蘭、ちょっとこっち良いか?」

「あ、はい」
マスターの声で私はカウンター内に戻る。

「ちょっと買い出し行って来るから店頼むわ」
そう言って出ていくマスターを見送った。
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