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伝わらない想い
第9章 伝えたい想い
「おお、おかえり」
お父さんがカウンターから声を掛けてくれる。

「蘭、おかえりなさい」

「え、お母さん」
私がお店で働くようになってからは、お母さんがここに来ることはほとんどなかった。

「蘭、ちゃんとやってるの?」

「どうしても蘭に会いたいって言うから、夜の支度、手伝ってもらったんだよ」

「あ、それは言っちゃだめって言ったでしょ」

「え、ああ、そうだったか?」
惚けたように言うお父さん。

「...だって、全然家に顔出してくれないんだもん」
不貞腐れたように言うお母さんは、50歳を過ぎているのにいつも私と姉妹に間違われる程若々しい。

「ごめんね、お母さん」

「あら、もしかして…あなたが陸くん?」
私の隣に立つ陸を見て言う。

「あ、えっと…はい、初めまして」

「蘭の母です」

「どうした?お前ら...その手...」
そこで初めてお父さんが気付いた。

私たちの手が握られていることを...。

「あの、お二人に話があります」
陸が二人の目を見てはっきりと言った。
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