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伝わらない想い
第7章 素直な気持ち
コートを着込み、以前陸に貰ったニット帽をかぶる。
あの日、この帽子を貰ってから1番のお気に入りになった。
やっと本格的な冬になって、この帽子の出番も増えていた。

玄関先の姿見で最終確認をして部屋を出る。

その瞬間、冷たい風が肌を刺した。

「寒っ...」

いつものようにスーパーに寄って買い出しを済ませる。

そして、2時頃お店に着く。

「蘭、お疲れ」

「お父さん」
お店が開いてる時はマスターと呼ぶけど、今はまだ準備中。

「今日はエビが安かったからアヒージョ作ろうと思って...」

「いつも悪いな」

「こちらこそ、働かせてくれてありがと」

エプロンを付けて、今夜のメニューの下拵えを始める。

「母さんが、近いんだから家に顔出すようにって言ってたぞ」

「はぁい」

気のない返事を返してエビの皮を剥いた。
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