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伝わらない想い
第7章 素直な気持ち
午後5時。
扉にかかるボードを【OPEN】に変える。

店はそれなりに繁盛していて、いつも賑わいを見せてくれた。

「マスター、このアヒージョ美味いね」
カウンターに座った一人のサラリーマン風の男の人が言う。

「ああ、それはこいつが作ったんだよ」
洗い物をする私の方を指差した。

「蘭ちゃん、めっちゃ美味いよ」

「ありがとうございます」
軽く会釈をする。

「蘭ちゃんも綺麗になったねぇ、マスターも心配でしょ」

「そうか?まだまだうちの奥さんには負けるよ」

「そのうちこの人と結婚しますって男連れてくるんだよ」

ふたりの勝手な会話を聞き流しながらふっと扉の方を見た。

ぎぃっと音がして、また新しいお客さんが入ってくる。
「いらっしゃいませ」
はっきりと姿が見える前に声を出す。

「あ、純…」

「あいてる?」

「カウンターなら...どうぞ」

純...と、確か、茜さん。

「こんにちは」
茜さんはキラキラと瞳を輝かせてニコッと笑いかけてくれた。

綺麗な人...。

「とりあえずビール...と、茜はどうする?」

「私もビールで」

ふたりの前にすっとジョッキを2つ並べた。
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