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友達でいるしかない
第7章 時の流れ
それから数か月に一回程度連絡を取り合って飲みに行くようになった。
ただし理由がないと誘えない。
出張のお土産を理由に会いに行ったことも何度もあった。
その間に彼女ができたことも数回。
つきあっても、やっぱりどこかで文香と比べて文香と重ねて見ていた。
そうなると上手く行かず長続きしない。
高校の時から何も成長していない俺。
シズに言われた言葉を思い出す。
『奥深くにあるものはきっと変わらない』
それを今になって実感する。
何年たってもその気持ちが薄れることもない。
だからと言って今の関係を崩したいとも思わない。
俺が一番望むことは文香の幸せ。
彼女が幸せならそれが良いのだと。
久しぶりに文香の会社の近くまで仕事で来ることになった。
終わる時間が分からなかったから連絡はしていない。
案の定、打ち合わせが終わったのは21時を過ぎてからだった。
一人でも行けるようになった『彩り』に足を向ける。
向かってる途中で反対側を歩いている文香の姿を見つけた。
思ってもいない偶然に俺は大きな声で呼ぶ。
「文香」
叫んでみるが気が付かない。
もう一度呼んでみようと声を上げかけ、それを止めた。