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恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第3章 誓約
 神依はその大きな手に甘えながら、窺うように日嗣を見上げる。
「……日嗣様、淡島での生活は楽しい?」
「ん……そうだな。ちょうど今日、彦ともそんな話をしたばかりだ。今までは何をせずとも手に入っていた物を、自分の手でこしらえてみるのは楽しいな。知らなかったことも沢山あるし──無論、質だけ考えれば今まで与えられていたものの方が格段に上だが、それ以上に魂が喜ぶのを感じる。家に帰ればお前達が賑やかに迎えてくれるしな」
「よかった。きっと高天原とは全然違う暮らしだろうし……、いろいろ我慢してないか、少し心配だったから。ほら、手」
「手?」
握る手の感触は、以前とは異なる。神依が繋いでいた手をほどき広げてみせると、日嗣もそれに倣って隣に広げてみせた。
 別段、気に留めるようなことは何もないように感じられたが、神依は少しだけ残念そうに呟く。
「日嗣様、初めて会った時はすっごく綺麗な手してたのに……私も、今までは禊と童が全部やってくれてたから何とも思わなかったけど、水仕事始めたら指先かさかさになっちゃって。手、繋いだ時に日嗣様もおんなじだなあって思って」
「ああ……そういうことか。そればかりは、仕方ないな」
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