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恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第3章 誓約
理性が働く時間はどんどん削られて、我慢もできず、意図せずとも声にならない甘やかな吐息が漏れる。
 男の方もそれが嬉しくまた愉しいらしく、さりとてすべての清純の花弁を引きちぎることもせず、囚われの姫君を弄ぶ悪漢のような振る舞いを、時折してみせた。
 今も何か思い付いたらしく、ふと唇を離すと意地悪そうに笑み、耳元で艶っぽく囁く。
「ほら……大叔父上にも、見せつけてやれ」
「っ、あ……」
朱印の刻まれた頬をその指でなぞられ、そのまま顎を持ち上げるほんの少しの仕草で視線を棚田のずっと向こうに導かれた神依は、満ちぬ月の胡乱(うろん)な暈に瞳を捕らえられて、慌てて目を反らした。
 そんなはずはないのに、真実あの男神に月を透してこの睦事を覗かれている気がして、胸の奥が瞬間的にかっと熱くなる。巡る血も熱を帯びてむず痒く、それをやり過ごすように腕も足も勝手に蠢く。
 見せ物にされて昂る、恥ずかしい女だなんて思われたくない。変なことを言わないで、と精一杯に理性と声を絞り出してそれを押し留めれば、日嗣は可笑しそうに笑って、顎を持ち上げていた指先を首筋に這わせた。
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