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恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第3章 誓約
「えっ……、ええっ!?」
何の造作も無いように、その玉を噛み砕いた。
神依は目の前で起きた、物理的には絶対にあり得ない光景に目を瞬かせ、先程の色っぽい空気すべてを吹き飛ばすようなすっとんきょうな声を上げる。しかしその瞬きの間に、砕けた石が柔らかな白い光となり浮き上がるのを見て、すぐに何か──神事であることを察した。
日嗣がそれをすくうように手を丸めれば、淡い光は自然とそこに集まり始める。そして──
「……うそ」
それは神依が見守る前で、両手で収まる程の小さな白狐へと姿を変えて、もぞりと動いた。
「これはまた……可愛らしい子が生まれたな」
ふんわりとそよぐ和毛(にこげ)の先は月の光を透かし、ちらちらと煌めいている。狐の子は体の倍くらいありそうなしっぽに顔を埋め、神依には砕かれる前の白翡翠と同じ形のまま、眠っているように見えた。
日嗣が鼻先をくすぐってやれば、子狐はぷるぷると顔を振り、ハッとして二人の顔を見比べる。
そして一度嬉しそうにけん、と鳴くと、甘えるように日嗣と神依の体を駆け、最後に神依の肩に登ると愛撫をねだるかのようにすりすりと頬に鼻先を突き付けてきた。
「やだ──もう」
可愛すぎる。
何の造作も無いように、その玉を噛み砕いた。
神依は目の前で起きた、物理的には絶対にあり得ない光景に目を瞬かせ、先程の色っぽい空気すべてを吹き飛ばすようなすっとんきょうな声を上げる。しかしその瞬きの間に、砕けた石が柔らかな白い光となり浮き上がるのを見て、すぐに何か──神事であることを察した。
日嗣がそれをすくうように手を丸めれば、淡い光は自然とそこに集まり始める。そして──
「……うそ」
それは神依が見守る前で、両手で収まる程の小さな白狐へと姿を変えて、もぞりと動いた。
「これはまた……可愛らしい子が生まれたな」
ふんわりとそよぐ和毛(にこげ)の先は月の光を透かし、ちらちらと煌めいている。狐の子は体の倍くらいありそうなしっぽに顔を埋め、神依には砕かれる前の白翡翠と同じ形のまま、眠っているように見えた。
日嗣が鼻先をくすぐってやれば、子狐はぷるぷると顔を振り、ハッとして二人の顔を見比べる。
そして一度嬉しそうにけん、と鳴くと、甘えるように日嗣と神依の体を駆け、最後に神依の肩に登ると愛撫をねだるかのようにすりすりと頬に鼻先を突き付けてきた。
「やだ──もう」
可愛すぎる。