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恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第3章 誓約
 その小さな体を胸に抱き、包み込むように頭から背を撫でれば、子狐はなお神依の体に頬を擦り付けてきた。手が沈むほど毛足が長い、ふかふかの手触り。甘えん坊な子のようだ。
 「ほら、抱っこ抱っこ──あ、男の子みたいですよ」
「そうか」
神依が言えば、日嗣は殊更に嬉しそうに笑い子狐を構う。
「実は、まじないをしていた」
「おまじない?」
「ああ。生まれてくる子が男なれば、と」
「……男の子だったら? どんなことが叶うんですか?」
「その先は秘密だ」
「なんだぁ」
神依は拗ねた振りをしてみせるが、淡島の神事には多かれ少なかれ外には秘める部分があり、その未知にこそ神性が宿る──という概念があることを既に見知っていたので、それ以上は問わなかった。
 ただ日嗣が嬉しそうなことだけは判ったので、きっと良いことが結ばれたのだと思う。それは単純に、自分も嬉しかった。
 ──ところが。
「では、次はお前の番だ」
「──えっ!?」
その日嗣から発せられた言葉に、神依は思わず辺りに響くような声を上げて目を見開いた。
「な、何言って……ぜったい無理です。だって、日嗣様は神様だけど、私は……」
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