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恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第3章 誓約
 「多分これなら、お前の魂と混ざりやすい」
「……はい」
中でも日嗣が選んだのは、禁足地に蒸す苔のように濃厚な、紺にも近い青緑をした小さな勾玉。かつて神依とも縁深い地で採れた、上質な青瑪瑙(めのう)──出雲石だった。
「えっと……おまじないは、日嗣様が男の子だったから、私は……もし生まれてくる子が、女の子だったら?」
「ああ。……お前は何を願う?」
「それは、内緒です」
神依はにこりと笑い、先程の日嗣のように勾玉をくわえると目をつむって、心の中で運命を問う。この胎児の形をした石に宿る何かに、自分の思い描く、優しい未来を乞う。
 (……もしも生まれてくる子が女の子だったら……)
 これから先もずっと、みんなで仲良く過ごせる。
 日嗣様とも、ずっと一緒にいられる。
 ──とそこまで思って、贅沢だっただろうかとちょっと反省しながらおそるおそる目を開けば、日嗣はもうじっと自分を見つめてくれていた。
 静かな情炎を宿した瞳。それでようやく、これは目合(まぐわ)い──肉体を介さない、契りなのだと理解する。
(……でも、それなら)
大丈夫。
 絶対に生み出せる、と神依は確信を持って日嗣を見つめ返した。
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