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恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第3章 誓約
『音にも聞きし黄泉帰りの、新世(あらたよ)にまします偉大なるお二方の逢瀬に割り入り直に口を利くご無礼、平にご容赦下さいませ。……わたくしは、宇迦之御魂神(ウカノミタマノカミ)にお仕え申し上げ、この棚田の守護のお役目と引き換えにあの社に祭られた、名も無き淡島の神でございます』
「うかのみたま……様?」
「……お前が父とも慕う、黄泉に坐す神の系譜の女神だ。農耕や養蚕、商工業を守護する天津神で、特に穀物を司する御饌津神(みけつかみ)の一柱でもある。数多の狐の眷族を使い、それ自体にも神威を与えている……その神狐を、稲荷と呼ぶんだ」
「そう……ですか」
その日嗣の言葉に、神依は社を見遣る。
 ──素戔鳴。
 淡島でその御名を思い起こすのは、いつ以来であっただろうか。その思いがけない繋がりに、遥か悠久の古の血脈を感じて、黄泉での暮らしを思い出す。
 お父さんと、お母さんと呼ばせてくれた優しい神々。否、本当にお父さんだと、お母さんだと思っていた。
 生きる力を与えてくれた力強い父神。命の源を優しく握って与えてくれた、尊い母神。
 忘れていたわけではないのにもうどこか懐かしくて、けれどこの繋がりも、やはり縁あってのものだったのだろうかと──胸の奥で、記憶の中の父母に問う。
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