- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第3章 誓約
だがそこまで聞いて、彼女がなぜ今その姿を見せたのか、神依はすぐに理解した。袖の下からちらちらと様子を窺う子狐達に目を遣れば、女神もまたその視線を追う。
「……日嗣様」
「……」
神依が日嗣を窺えば、日嗣もまたそれを理解しているようで難しい顔をしていた。日嗣自身この二匹を手放したくない気持ちも心にあったし、何より神依を想えば……簡単には差し出せない。どんな生まれであれ、それが人の形でないものであれ、紛うことなく子は子だ。初めて二人で得た、生あるものに変わりない。たとえ元が石であったとしても。
(だが……)
しかし、この子らはまた神である。人の形を持たない端の神であっても、生まれながらに知恵を持ち、もう既にその分別を識(し)っているのだ。
それはある意味では、親子の絆を希薄にするものかもしれない。だからこそ神として生まれ出でた以上、誠実な信仰を得て人と共に愛し愛されて生きていくことが、神として何よりの幸いであることを──今の自分はもう知っている。
そこまで考え、日嗣は最終的には子狐達自身に決断をゆだねることにした。
「……おいで」
「……日嗣様」
「……」
神依が日嗣を窺えば、日嗣もまたそれを理解しているようで難しい顔をしていた。日嗣自身この二匹を手放したくない気持ちも心にあったし、何より神依を想えば……簡単には差し出せない。どんな生まれであれ、それが人の形でないものであれ、紛うことなく子は子だ。初めて二人で得た、生あるものに変わりない。たとえ元が石であったとしても。
(だが……)
しかし、この子らはまた神である。人の形を持たない端の神であっても、生まれながらに知恵を持ち、もう既にその分別を識(し)っているのだ。
それはある意味では、親子の絆を希薄にするものかもしれない。だからこそ神として生まれ出でた以上、誠実な信仰を得て人と共に愛し愛されて生きていくことが、神として何よりの幸いであることを──今の自分はもう知っている。
そこまで考え、日嗣は最終的には子狐達自身に決断をゆだねることにした。
「……おいで」