- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第3章 誓約
禊は呆れた素振りをしながら誰よりも世話を焼いてくれるだろうし、玉から成ったことを知れば、童もうんと喜んでくれるだろう。亡き父の願い通り賑やかになっていく守家に、若き屋敷神もますます慶びその神威を高め、家に在る他の神も、また家に訪れる様々な客人も、あらゆる言祝ぎの詞をもって兄妹の幸せを祈ってくれるはずだ。
「わ……私──」
そんな明日を想い描いて、言いたいことは山程あるはずなのに胸につかえて出てこない。眉を下げ肩を落とす小さな女神を見れば、もしかしたら自分がわがままなだけなのかもしれないと、罪悪感にも苛まれる。
滲んだ涙をせめて溢さないようにと瞳いっぱいに溜めていれば、女神は自分にも言い聞かせるように小さく頭を横に振って、神依の代わりに口を開いた。
『……いいえ、ご無理を申しているのはわたくしの方なのです。ただお二方の満ち足りた時に、我が身の孤独を想ってもの寂しく感じてしまったのかもしれません。それこそ我が主の神への、そしてわたくしを奉る者達への背信──日々の信仰の恵みを忘れた、夢幻の如き過ぎた望みだったというのに。姫様のお優しい御心に気安く甘えたばかりに、それを傷付けてしまいましたね──』
「……」
「わ……私──」
そんな明日を想い描いて、言いたいことは山程あるはずなのに胸につかえて出てこない。眉を下げ肩を落とす小さな女神を見れば、もしかしたら自分がわがままなだけなのかもしれないと、罪悪感にも苛まれる。
滲んだ涙をせめて溢さないようにと瞳いっぱいに溜めていれば、女神は自分にも言い聞かせるように小さく頭を横に振って、神依の代わりに口を開いた。
『……いいえ、ご無理を申しているのはわたくしの方なのです。ただお二方の満ち足りた時に、我が身の孤独を想ってもの寂しく感じてしまったのかもしれません。それこそ我が主の神への、そしてわたくしを奉る者達への背信──日々の信仰の恵みを忘れた、夢幻の如き過ぎた望みだったというのに。姫様のお優しい御心に気安く甘えたばかりに、それを傷付けてしまいましたね──』
「……」