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恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第3章 誓約
『姫様……』
「……取り乱してしまって、ごめんなさい。……いいんです……、私も……きっと本当は、分かっているんです。だけどまだ、……上手くできませんでした……」
わずかな灯りの中でも見破れる、腫れぼったい神依の目元。二匹の子狐もまた、きゅう、と哀しげな声を喉の奥で鳴らし、そんな母を見上げる。その小さな声に神依はいびつに微笑むと、先程の日嗣を真似るように両の手でそっと二匹の体を包み込んだ。
「……びっくりさせて、ごめんね。……寂しいけど……今日私達がここに来たのも、あなた達がその姿で生まれたのも……こういうご縁があることを、もっと偉い神様が示してくれたからかもしれない。いつか必ず離れる時が来るなら……それが遅くても早くても、きっと私は一番邪魔しちゃいけないし、一番二人の幸せを願ってる。だから……」
だから。
──しかし、そこまで紡いだ言葉の先を凛と発することができるほど、やはり神依の心はまだ熟してはいなかった。
かつて自分を送り出してくれた母の、その本当に深かった愛情と強さを想い、そう振る舞えない自分のわがままさを改めて思い知る。だから言葉の代わりに、未だ虚ろな手にそのわがままさを託して神依は子狐達にねだった。一緒にいてほしいとねだった。
「……取り乱してしまって、ごめんなさい。……いいんです……、私も……きっと本当は、分かっているんです。だけどまだ、……上手くできませんでした……」
わずかな灯りの中でも見破れる、腫れぼったい神依の目元。二匹の子狐もまた、きゅう、と哀しげな声を喉の奥で鳴らし、そんな母を見上げる。その小さな声に神依はいびつに微笑むと、先程の日嗣を真似るように両の手でそっと二匹の体を包み込んだ。
「……びっくりさせて、ごめんね。……寂しいけど……今日私達がここに来たのも、あなた達がその姿で生まれたのも……こういうご縁があることを、もっと偉い神様が示してくれたからかもしれない。いつか必ず離れる時が来るなら……それが遅くても早くても、きっと私は一番邪魔しちゃいけないし、一番二人の幸せを願ってる。だから……」
だから。
──しかし、そこまで紡いだ言葉の先を凛と発することができるほど、やはり神依の心はまだ熟してはいなかった。
かつて自分を送り出してくれた母の、その本当に深かった愛情と強さを想い、そう振る舞えない自分のわがままさを改めて思い知る。だから言葉の代わりに、未だ虚ろな手にそのわがままさを託して神依は子狐達にねだった。一緒にいてほしいとねだった。