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恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第3章 誓約
 胸に抱く代わりに、そのふかふかの体に自らの頬を寄せて。すると二匹はその頬に鼻先を擦りつけて、甘えるように喉を鳴らした。
「あ……」
それで神依は一瞬、二匹が共に帰ることを選んでくれたのかと思ったが、子狐達は顔を見合せるとまるで挨拶をするように、棚田の女神にけん、と鳴く。
 「……神依」
「日嗣様……。……はい」
それで全てを悟った神依は、今度こそそれを拒まずゆっくりと手を引いて、日嗣の隣まで下がった。名残惜しく、また未練がましい手を抑えこむよう胸元でぎゅっと握れば、男の手が再び肩を抱いてくれた。
 慰めだけではない力強さ。哀しみを帯びた決断を讃え、またその寂しさを共に分かちあおうと言ってくれているような、きっと自分を甘やかしてくれる手。けれどそれは同じくらい、どこか脆く、弱々しくもある手だった。
 自分と同じように不完全で、無責任で──でもだからこそまた共に、隣同士手を繋いで生きていける。
 そんな幼い父母を前に、子狐は女神の左右に控え、小さいながらも凛々しく背を伸ばして座してみせる。優しくて泣き虫な母へ、心配はいらないと体全体で示してみせる。
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