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恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第3章 誓約
 神が神であることを選ぶのに何の理由も要らない。巫女である神依は既にそうして何度も何度も名も無き神を見出だしてきた。淡島でも黄泉でも。巫女として神を見出だし……別れも経て、またこの場所に帰ってきた。
 それでも……日嗣はいっそう寂しそうな神依を抱き寄せると、父として、また巫女の背としての役割を果たそうと語りかける。
 「……一時の別れを悲しむことはない。何度でも連れ出してやるから、またいつでも会いにくればいい。たくさん土産を持って、一緒に来よう」
「……はい。……女神様、この子達をよろしくお願いします」
『……姫様方の、大切な御子なれば。わたくしでは力及ばぬこともありましょうが、時を経た時この子達がお二方の名に恥じぬ神でありますよう……どうぞ末長く、見守って下さりませ』
女神はそれを穏やかな──けれど確とした声で宣言すると、最初に姿を現したとき以上に粛々と頭を垂れる。そしてそれに神依が頷いて応えると、子狐達はまた嬉しそうに鳴き空(くう)を蹴り、日嗣と神依の回りを駆け回った。
 その度にしゃんしゃんと光の粒が弾け──神依と日嗣がそれを目で追えば、二匹は光の尾となって箒星のように社に向かって飛び去り、再び前に向き直れば棚田の女神もまた頭を下げたまま、朧気な光の粒になって消えていった。
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