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恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第3章 誓約
「はい。だからゆっくり、一緒に生きていきたいなあって。何でもすぐに決められちゃうのは、ちょっとだけ悲しいんです。あ──そうだ、お煮しめです」
「煮物?」
「そう。時間も手間もかかるけど、じっくりコトコト煮込むと味がうんと染み込んで、たくさんの具材の旨味が馴染んですっごく美味しくなるんです。……って、禊の受け売りですけど……でもそうやって、みんなでゆっくり生きていきたいなって。それで、日嗣様とも──…」
「……俺とも?」
「……」
それまで一心にこちらを見つめてきた瞳がふいっと反らされて、そのあまりの雄弁さに日嗣は思わず笑みを深める。しかしそれを雰囲気で感じ取った神依は、ちらちらと日嗣を窺い口の中で呟いた。
「えっと……やっぱりいいです」
「二人のことは、お互いにちゃんと言うんじゃなかったのか」
「う……」
「……しょうがない奴だな」
日嗣は身を屈めると、繋いでいた手を自らの首元へ導く。そのまま神依の足に腕を回し、掻っ攫うように胸に抱き寄せた。
「──日嗣様!」
「しっかり掴まれ。飛ぶぞ」
「もう──」
口を尖らせながらも、神依は示された通りに日嗣の首に腕を回す。限りなく近くなる特別な玉飾りに狐の子達を想い、その子らの代わりに甘えるように頬を寄せれば、体がふわりと浮くのを感じた。
「煮物?」
「そう。時間も手間もかかるけど、じっくりコトコト煮込むと味がうんと染み込んで、たくさんの具材の旨味が馴染んですっごく美味しくなるんです。……って、禊の受け売りですけど……でもそうやって、みんなでゆっくり生きていきたいなって。それで、日嗣様とも──…」
「……俺とも?」
「……」
それまで一心にこちらを見つめてきた瞳がふいっと反らされて、そのあまりの雄弁さに日嗣は思わず笑みを深める。しかしそれを雰囲気で感じ取った神依は、ちらちらと日嗣を窺い口の中で呟いた。
「えっと……やっぱりいいです」
「二人のことは、お互いにちゃんと言うんじゃなかったのか」
「う……」
「……しょうがない奴だな」
日嗣は身を屈めると、繋いでいた手を自らの首元へ導く。そのまま神依の足に腕を回し、掻っ攫うように胸に抱き寄せた。
「──日嗣様!」
「しっかり掴まれ。飛ぶぞ」
「もう──」
口を尖らせながらも、神依は示された通りに日嗣の首に腕を回す。限りなく近くなる特別な玉飾りに狐の子達を想い、その子らの代わりに甘えるように頬を寄せれば、体がふわりと浮くのを感じた。