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恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第3章 誓約
 だがこれなら、濡れてもいいかと猿彦はのんびりと跳び石を渡り、小路を抜けて小さな門を潜る。そのまま庭の方へ回れば、縁側に座り込んでにこやかに語らう童と家主の友、そしてその僕の姿が目に入った。床に無造作に広げられた駄菓子の包みが、いっそう和やかな気持ちにさせてくれる。
 「──よう。今日は賑やかだな」
「猿彦様」
声を掛ければ、三人は正しく座り直して礼を取る。巫女である優沙やその禊はもちろん、「親しい神であっても礼を欠くことが無いように」と兄貴分から重々言い含められている童も、その言い付けをなるべく守るように努めていた。なるべく、出来る限り。
 それを知る猿彦が、童も大変だなと笑えば、一ノ兄に怒られるからと至極幼い答えが返ってくる。それにこれさえ守れば、とりあえず日常生活の中でのみ、日嗣と神依に関してはとやかく言われない。
 「猿彦様、お濡れにはなりませんでしたか? 禊、何か拭くものを頼んできてちょうだい。それからお酒も」
「はい」
優沙は自身の禊にそれを伝え、傍らにどかりと座り込んだ神に向き直る。
「悪いな。まあこの降りなら大したことねえんだけど、変な天気だよな」
「ええ、本当に。私もここに来るまでに、虹を三本も見ましたわ。日照雨(そばえ)には少し早い気も致しますが」
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