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恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第3章 誓約
 案内されるままにそこへ向かった猿彦は、禊が殊更に呆れた様子を見せていた理由を一目で理解して、自身もため息をついてみせる。
「これはあれか? 昨夜(ゆうべ)、こう色っぽい話とか匂い立つような話とか、そういうのがあったとかじゃあないんだよな?」
「うん。兄ちゃんと姉ちゃん、昨日夜更かししてずーっとお喋りしてたんだって。だから」
「はあー、ガキの遊びかよ……」
と、ぼやく声もひそひそ声で。
 大袈裟に肩を落としてみせた猿彦は、けれどすぐに口元に大きな笑みを浮かべると、勢いよく顔を上げた。
「なあ禊、ちょっと筆と墨持ってこいよ。悪戯してやる」
「……構いませんが、それは御友人の方だけになさって下さいますか」
「馬鹿、こういうのはみんな分け隔てなくやるから楽しいんだろ」
「なら神依の方は私が致しますわ。私も、『御友人』ですもの」
「……」
「──優沙様!」
ますます眉間の皺を濃くする禊に、慌てて主をたしなめるもう一人の禊。しかし優沙は二人の間をすり抜けると、勝手知ったる他人の家とばかりに神依の部屋へ向かい、筆箱を持ち出してくる。
 何故こうもこの家には、子供っぽいたちの者が集まるのか──禊はそう思いながらも言われた通り律儀にその準備を始め、仕方なく、渋々と、愛ある暴虐者達の片棒を担ぐ。
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