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恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第4章 傘爺

「かさじぞう、じゃなくて?」
「んーん、お話の中のおはなしじゃないの」
誰かがずっと借りっぱなしだった意中の本とようやく巡り合った詩織は、貸し出しカードを書きながら首を傾げて昔話を思い出す。前にお母さんが読んでくれた、絵本の昔話。雪をかぶったお地蔵さまに、優しいおじいさんが“かさ”をあげる話。“かさ”といいながら、絵本の中では藁で編んだ、持ち手の柄が無いものだったけど。
──そういえば、今日は午後から雨が降るからとお母さんが傘を持たせてくれた。おそろいの水色の傘。水色に、白や黄色の水玉模様がポップに浮かんだ可愛い傘。
詠士は振り回したり溝に突っ込んだりしてすぐに壊してしまうことが多かったが、この傘は気に入っているらしい。爪先で傘の先をトントンとつついて歩きながら、雪にならないかなーなんて言っていたっけ。
窓の外を見れば、確かに空はうっすらとした灰色の雲に覆われている。詩織達の座る、奥まった場所にあった四人掛けテーブルを包む空気も、なんとなく薄暗い気がした。
「──でも、おじいさんのはなしなんだよね」
詩織が問えば、友人はうんうんと物知り顔で頷く。
「んーん、お話の中のおはなしじゃないの」
誰かがずっと借りっぱなしだった意中の本とようやく巡り合った詩織は、貸し出しカードを書きながら首を傾げて昔話を思い出す。前にお母さんが読んでくれた、絵本の昔話。雪をかぶったお地蔵さまに、優しいおじいさんが“かさ”をあげる話。“かさ”といいながら、絵本の中では藁で編んだ、持ち手の柄が無いものだったけど。
──そういえば、今日は午後から雨が降るからとお母さんが傘を持たせてくれた。おそろいの水色の傘。水色に、白や黄色の水玉模様がポップに浮かんだ可愛い傘。
詠士は振り回したり溝に突っ込んだりしてすぐに壊してしまうことが多かったが、この傘は気に入っているらしい。爪先で傘の先をトントンとつついて歩きながら、雪にならないかなーなんて言っていたっけ。
窓の外を見れば、確かに空はうっすらとした灰色の雲に覆われている。詩織達の座る、奥まった場所にあった四人掛けテーブルを包む空気も、なんとなく薄暗い気がした。
「──でも、おじいさんのはなしなんだよね」
詩織が問えば、友人はうんうんと物知り顔で頷く。

