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恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第4章 傘爺

「なんか、冬休み明けくらいから街中をふらふらしてるんだって。お兄ちゃんも見たって言ってた。ぬぼーっとしてて幽霊みたいで、絶対近付いちゃダメだって」
「え……幽霊?」
「そうなの、雨が降ってないときでもボロっちい傘さして歩いてるの。もう何人も小さい子達がモクゲキしてて、ママも不審者の情報メール来たって言ってた」
「あれ? 幽霊の話? それとも人間?」
「私もよくわかんない。けど、ゼッタイ幽霊だと思う。おとな達にはわからないけど、だから最近お天気が悪いんだって。傘爺のボロっちい傘のせいだって、塾の違う学校の子も言ってたもん」
「ん……なんか、」
不思議だね、と呟こうとして、詩織はあっと息を呑む。話しながら書いていたせいか、図書カードの日付を間違えてしまっていた。
(市立図書館みたいに、バーコードにすればいいのに)
窓の外に目を遣れば、ちょうど大きく風が吹き荒れ、窓ガラスを揺らした。それは唐突で、けれども音も長く長く続いて、天井まで響いて揺らした気がした。
「うわっ、やだ……傘爺の話、してたからかな」
「ここちょっと寒いし、教室戻ろっか」
「うん」
詩織は急いでカードを書き直すと、手提げかばんに筆箱を突っ込んで立ち上がる。
「え……幽霊?」
「そうなの、雨が降ってないときでもボロっちい傘さして歩いてるの。もう何人も小さい子達がモクゲキしてて、ママも不審者の情報メール来たって言ってた」
「あれ? 幽霊の話? それとも人間?」
「私もよくわかんない。けど、ゼッタイ幽霊だと思う。おとな達にはわからないけど、だから最近お天気が悪いんだって。傘爺のボロっちい傘のせいだって、塾の違う学校の子も言ってたもん」
「ん……なんか、」
不思議だね、と呟こうとして、詩織はあっと息を呑む。話しながら書いていたせいか、図書カードの日付を間違えてしまっていた。
(市立図書館みたいに、バーコードにすればいいのに)
窓の外に目を遣れば、ちょうど大きく風が吹き荒れ、窓ガラスを揺らした。それは唐突で、けれども音も長く長く続いて、天井まで響いて揺らした気がした。
「うわっ、やだ……傘爺の話、してたからかな」
「ここちょっと寒いし、教室戻ろっか」
「うん」
詩織は急いでカードを書き直すと、手提げかばんに筆箱を突っ込んで立ち上がる。

