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恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第4章 傘爺

入学式の日の夜、お父さんが言っていた。お父さんも昔この小学校に通っていて、その頃はトイレの花子さんや闇子さん、物置のモナリザや中庭の池の人面魚、理科室の宇宙人なんて怖い噂があったらしい。
でもそういうのは、面白半分で話したら駄目。そういう子の前には本当に姿を現して、家までついてきちゃうからね、と。
それで詩織は学校なんか行きたくないとわんわん泣いて、困ったように笑うお父さんを、詠士とお母さんが二人がかりで叱ったのだった。
だから、登下校はいつも詠士が一緒。
「何があっても俺が詩織を護ってやるから、ゼッタイ大丈夫!」
自分より小さいくせにそう言ってくれた片割れは、今もその約束を守ってくれていた。
*
「──傘爺って知ってる?」
「かさじじい? かさじぞう、じゃなくて?」
午前より一層黒さを増した空に、下校のチャイムが鳴り響く。湿った風に雨の薄い匂いが混ざり始めて、不穏な空気を感じ始めた教師達は生徒にも早めの下校を促していた。
廊下や玄関、学校の周りではまだまだ遊び足りずたむろする子供達の姿も見られたが、通学路を進むごとにそれもまばらになっていく。そんな中、詩織は傍らを歩く詠士に“傘爺”なる不思議な噂について問うてみた。
でもそういうのは、面白半分で話したら駄目。そういう子の前には本当に姿を現して、家までついてきちゃうからね、と。
それで詩織は学校なんか行きたくないとわんわん泣いて、困ったように笑うお父さんを、詠士とお母さんが二人がかりで叱ったのだった。
だから、登下校はいつも詠士が一緒。
「何があっても俺が詩織を護ってやるから、ゼッタイ大丈夫!」
自分より小さいくせにそう言ってくれた片割れは、今もその約束を守ってくれていた。
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「──傘爺って知ってる?」
「かさじじい? かさじぞう、じゃなくて?」
午前より一層黒さを増した空に、下校のチャイムが鳴り響く。湿った風に雨の薄い匂いが混ざり始めて、不穏な空気を感じ始めた教師達は生徒にも早めの下校を促していた。
廊下や玄関、学校の周りではまだまだ遊び足りずたむろする子供達の姿も見られたが、通学路を進むごとにそれもまばらになっていく。そんな中、詩織は傍らを歩く詠士に“傘爺”なる不思議な噂について問うてみた。

