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恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第4章 傘爺

そうかもしれない。かっこいい芸能人や大人びたドラマの話をする現実的な女の子達でさえ、時折ふわりと男子の知らない世界に降り立つものだ。
「でももしいたらさ、夏に雨が降らないときとかは助かるよな。傘開けば雨が降るんだろ? 便利じゃん」
「……なんか、それだと怖くないね」
「そうだよ。俺だって雨の日けっこう好きだし」
「そっかぁ。でも言われてみれば、たしかに雨の日って音楽も綺麗に聞こえる気がするし、本もじっくり読める気がする。“きつねのよめいり”で、空から差し込む光もきれいだよね」
──ポツリ。
その時ちょうどコンクリートに黒い染みができて、詠士と詩織は揃って空を見上げた。雲は今にも溶け落ちてきそうなほどに重たげで、ティーポットから落ちる最後の一滴のような大きな雫が二人の鼻先にもポツポツと落ちてくる。双子の雫。
「雨だー」
「お母さんの言った通りだね」
二人はおそろいの傘を開くと、傘の分だけ広がった距離で車道にはみ出さないよう、一列にその並びを変える。
周りの景色はそれからすぐに灰色に霞み、溜め込んだものを一気に吐き出すように雨足も強まった。アスファルトの隙間を縫って道にもうっすらと細い川が流れ始め、たまに通る車がそれを踏み散らすので、詩織はお気に入りの手提げかばんが濡れないように傘と持ち変えて歩くことにした。
「でももしいたらさ、夏に雨が降らないときとかは助かるよな。傘開けば雨が降るんだろ? 便利じゃん」
「……なんか、それだと怖くないね」
「そうだよ。俺だって雨の日けっこう好きだし」
「そっかぁ。でも言われてみれば、たしかに雨の日って音楽も綺麗に聞こえる気がするし、本もじっくり読める気がする。“きつねのよめいり”で、空から差し込む光もきれいだよね」
──ポツリ。
その時ちょうどコンクリートに黒い染みができて、詠士と詩織は揃って空を見上げた。雲は今にも溶け落ちてきそうなほどに重たげで、ティーポットから落ちる最後の一滴のような大きな雫が二人の鼻先にもポツポツと落ちてくる。双子の雫。
「雨だー」
「お母さんの言った通りだね」
二人はおそろいの傘を開くと、傘の分だけ広がった距離で車道にはみ出さないよう、一列にその並びを変える。
周りの景色はそれからすぐに灰色に霞み、溜め込んだものを一気に吐き出すように雨足も強まった。アスファルトの隙間を縫って道にもうっすらと細い川が流れ始め、たまに通る車がそれを踏み散らすので、詩織はお気に入りの手提げかばんが濡れないように傘と持ち変えて歩くことにした。

