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恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第4章 傘爺
 降りしきる雨。地面から沸くように立ち込める薄もやの向こうから、誰かがこちらに向かって歩いてくる。のったり、のったりと。影になっていて顔はよくわからない。けれど詩織は、男の人だと思った。だからこそ詠士も立ち止まったに違いない。
 少しずつ、少しずつ近づいてくるその男の人の頭上には、自分達のものよりも大きな大人用の傘。色は黄色と灰色が混ざったような、変な薄暗さを宿した薄い水色。水溜まりの水をすくった傘の色。ふと、夏休みに遊びに行った、おばあちゃんの家にあった昔の雑誌を思い出した。色褪せた時間の色。骨が一本、折れている。あれは──あれは。
(傘爺……)
知らず知らず、詩織の指先が詠士の服をつまむ。それで我に返った詠士は、いきなり詩織の腕をつかむと来た道を引き返すように駆け出した。
 「──詠士! あ、傘!」
「いいから!」
詠士は自分の傘を置き去りにしたまま、ぐいぐい詩織を引っ張って走る。それから近くの裏路地に飛び込むと、身をひそめながら慎重に通りの方を窺った。
「なあ、あれって傘爺だよな」
「うん……多分」
詠士の頭の上から、詩織も顔だけを覗かせて通りの方を見遣る。
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