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恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第4章 傘爺
視線を少し下げれば、そこにはうらやましいくらいつやつやの詠士の髪。それがくりんと横に動いて、肩越しに真ん丸の瞳で見上げられる。
「詩織、足見える?」
「うぅん……なんかもやもやしてて、よくわかんない。やっぱり、幽霊なのかなぁ」
「別に透けてたりはしてないけどな」
確かに、後ろの背景が透けて見えていたりはしない。ただ例のぼろい傘は、人影の歩みに合わせるようにふわ、ふわ、と揺れている。
 「あ」
「あー……」
やがてそれは、自分達が置き去りにしてしまったもう一つの傘の元まで来るとぴたりと動きを止め、うつむくようにそれをじっと見下ろした。
 男──近くで見る傘の下の顔は、確かに男の人のもの。重たげなまぶたと、鼻から伸びる深いシワが印象的な──傘爺という呼び名そのままの、老いた男の人だった。上から下まで、あの灰色を宿した。
 生地が薄いのか、よれてしまっているのか……だらりとしたコートにもっさりとしたマフラーを巻いて、それ自体はよく見る冬の装いだったのかもしれないが、なぜだか詩織にはものすごく寒そうに見えてしまう。だけれどそれこそがあのお爺さんの不幸の色と形なのだと、そんな言葉がすとんと頭の中に落ちてきて……なんともいえない、あの雨霧のようなもやもやが心の中にわきあがった。
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