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恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第4章 傘爺
それから水を払うでもなくくるくるとそれをたたみ、脇の家の塀に引っ掛けるとまた自身の傘を持ち直し歩き始める。
 ──こちらに、近づいてくる。
「隠れて!」
詩織は小声で、けれど勢いよく詠士を自分の方に引っ張り、数歩を路地の奥へと下がる。そのまま二人して息を殺して視線だけで傘爺を待ち受けていれば、やがて傘爺はのたり……のたりと、あの独特な歩みで、二人が潜む路地の前を通り過ぎていった。
 雨音に紛れてしまったのか、足音も聞こえない。それどころか、先程まで意地悪なくらい二人に水を浴びせようとしていた車の一台すら通らず、辺りを包み込むのは雨の音だけ。
 詩織と詠士はどちらともなく顔を見合わせると、それからわずかな時間を置いて再び通りの方へと顔を出す。傘爺の姿はまだ道の向こうにあって、その鈍い歩みに合わせてあのぼろい傘が揺れていた。
 「詩織──行こう! 後つけてみよーぜ!」
「──ええ!?」
予想だにしなかった詠士の言葉に、詩織は目を丸くする。
「後をつけるって──」
「だって、今度はまたいつ会えるかわかんねーじゃん。それに──」
「それに?」
「俺、なんかあの人とどっかで会ったことがあるような気がするんだ」
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