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恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第4章 傘爺


 お気に入りの傘は、一応水気を払ってはみたものの、やはりどこか土の色が残ってしまっているような気がした。
「これ、乾いたら粉っぽくなるやつだぁ……。お母さんに怒られるかなぁ」
「庭の水道の、キレイな水でこっそり洗えば大丈夫だって!」
「そうかなぁ……」
二人して一つの傘を見上げれば、雨雲の色を滲ませた水色。傘爺を追いかけることを優先して置き去りにしてしまった詠士の傘も、きっと似たり寄ったりだろう。詩織は傘爺の子供バージョンだと思ったが、口にはしないようにした。
 視線を前に戻せば、傘爺の色褪せた傘とずんぐりとした背。歩いてきた通学路をさかのぼるように、詩織と詠士はその背を追っていく。もともと車通りが多い道でもなかったが、その流れもぴたりと止んで、辺りには雨の音とその気配が漂うのみとなっていた。
 そんな中、ぴちゃん、ぴちゃんと活きた水の音が聞こえてきて、何だろうと足元を見れば、あっちこっちと水たまりを追う詠士の足。それで詩織も、そういえば半ぶんこをしていたんだと思い至って、自分もアスファルトの黒を踏んでいった。
 二つに分けられた世界を、双子の自分達が繋いでいく。二人で一つにしていく。
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