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恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第4章 傘爺

その間にも二人の足は通い慣れた道から外れ、たまに家族で出掛けるときに車の中から見たことがあるようなないような、大きな通りに出た。車は通っていたが、白や黒のありふれた色ばかり。お店の看板や街路樹も雨霧に紛れてぼんやりとしており、信号機の灯だけが妙に鮮やかに見えた。
十字路。向かう先の横断歩道の信号は赤。詩織と詠士は傘爺から距離を取り、信号が青に変わるのをじっと待つ。旧い信号機なのか、青に変わるまでの時間をカウントダウンして教えてくれる機械もない。その信号機の隣には、見慣れないセーラー服を着たお姉さんがいるだけで、他には誰もいなかった。
(青になったら、白だけ渡る)
傘爺の足元──お父さんの履く靴とは違う古ぼけた革靴を眺めながら、詩織は詠士と一緒に決めた通学路のルールを思い返す。二人だけで決めたはずなのに、なぜかお父さんやお母さんも知っていた。お父さんやお母さんも、同じようなルールで学校に通っていたことがあったのだという。それを聞いて、なんとなくうれしくなった。
「──詩織!」
「あ」
不意にくんっと腕を引かれ前を向けば、信号が青に変わっている。傘爺はもう横断歩道の真ん中くらいを歩いていて、詩織は詠士と顔を見合せると、急いでそれを追った。
十字路。向かう先の横断歩道の信号は赤。詩織と詠士は傘爺から距離を取り、信号が青に変わるのをじっと待つ。旧い信号機なのか、青に変わるまでの時間をカウントダウンして教えてくれる機械もない。その信号機の隣には、見慣れないセーラー服を着たお姉さんがいるだけで、他には誰もいなかった。
(青になったら、白だけ渡る)
傘爺の足元──お父さんの履く靴とは違う古ぼけた革靴を眺めながら、詩織は詠士と一緒に決めた通学路のルールを思い返す。二人だけで決めたはずなのに、なぜかお父さんやお母さんも知っていた。お父さんやお母さんも、同じようなルールで学校に通っていたことがあったのだという。それを聞いて、なんとなくうれしくなった。
「──詩織!」
「あ」
不意にくんっと腕を引かれ前を向けば、信号が青に変わっている。傘爺はもう横断歩道の真ん中くらいを歩いていて、詩織は詠士と顔を見合せると、急いでそれを追った。

