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恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第4章 傘爺

白、白、白。お姉さんとすれ違う。透明のビニール傘。白、白、白。
双子でも「あいあいがさ」になるのかは分からなかったけど、せま苦しい傘の下でも二人の歩調はぴったりと合った。やっぱりそれも、双子だから──なんだろうか。
横断歩道を渡り切ると、傘爺はしばらく道なりに歩いていたが、やがて一本の道を脇に入るとさらにその先へと足を進めた。
外観も綺麗に整備され、大型店舗が立ち並ぶ大通りから逸れたその道は、昔ながらの家屋が身を寄せ合うように並び、どこか錆びた印象を詩織にもたらした。怖い話にでてくるような……そんな物語を読んでいるときに思い浮かべるような、何かが凝り固まった、暗い印象の町へと滑り込んでしまったような気がした。鬱屈として、正しく年をとることができなかった町──
「あっ、あそこ入った!」
「うん……でもここが、傘爺の目的地?」
──その奥には学校のグラウンドより狭いくらいの土地が開け、灰色の大きな建物がぼんやりと浮かんでいる。道路や歩道との境界となる植え込みからは石碑が顔を出しており、そこには「なんとか記念病院」と彫刻されていた。「なんとか」の部分は、詩織達には読めない難しい漢字だった。
双子でも「あいあいがさ」になるのかは分からなかったけど、せま苦しい傘の下でも二人の歩調はぴったりと合った。やっぱりそれも、双子だから──なんだろうか。
横断歩道を渡り切ると、傘爺はしばらく道なりに歩いていたが、やがて一本の道を脇に入るとさらにその先へと足を進めた。
外観も綺麗に整備され、大型店舗が立ち並ぶ大通りから逸れたその道は、昔ながらの家屋が身を寄せ合うように並び、どこか錆びた印象を詩織にもたらした。怖い話にでてくるような……そんな物語を読んでいるときに思い浮かべるような、何かが凝り固まった、暗い印象の町へと滑り込んでしまったような気がした。鬱屈として、正しく年をとることができなかった町──
「あっ、あそこ入った!」
「うん……でもここが、傘爺の目的地?」
──その奥には学校のグラウンドより狭いくらいの土地が開け、灰色の大きな建物がぼんやりと浮かんでいる。道路や歩道との境界となる植え込みからは石碑が顔を出しており、そこには「なんとか記念病院」と彫刻されていた。「なんとか」の部分は、詩織達には読めない難しい漢字だった。

