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恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第4章 傘爺

傘爺は駐車場を横切り、エントランスでそのアイデンティティーともいえる灰水色の傘をたたむと、回転扉を抜けていく。
自分達が勝手に入っては大人達に怒られやしないかとまごつき出遅れた二人だったが、玄関先にある案内板を見ると、ちょうど面会時間らしかった。だから詩織達がその後を追っても、入口付近に立つ警備員だったり受付の人だったりに見咎められることはなく、初めてくぐる回転扉にさえ気をつければ、あとは難無く忍び込めた。
中は古くも新しくも感じさせない、特徴のない作り。物心ついてから大きな病院に来たことのない詩織達には物珍しさもあったが、漫画やテレビに出てくる病院の風景とあまり変わらないなとも思った。ただ天気のせいか、やはりどこか薄暗さを残す──取り替え間際のような蛍光灯色に包まれ、夜の病院のようだった。──もちろん二人が、夜の病院に行ったことなどなかったが。
そしてむわりとした生温い空気が、今の今まで冷たい雨にさらされていたのだということを二人に思い出させてくれる。そういえば、風邪をひいたときや何かの予防接種で連れていかれる近所の小さな病院も、やけに暑かった気がする。熱のせいかとも思ったが、案外病院というところはそういうものなのかもしれない。
自分達が勝手に入っては大人達に怒られやしないかとまごつき出遅れた二人だったが、玄関先にある案内板を見ると、ちょうど面会時間らしかった。だから詩織達がその後を追っても、入口付近に立つ警備員だったり受付の人だったりに見咎められることはなく、初めてくぐる回転扉にさえ気をつければ、あとは難無く忍び込めた。
中は古くも新しくも感じさせない、特徴のない作り。物心ついてから大きな病院に来たことのない詩織達には物珍しさもあったが、漫画やテレビに出てくる病院の風景とあまり変わらないなとも思った。ただ天気のせいか、やはりどこか薄暗さを残す──取り替え間際のような蛍光灯色に包まれ、夜の病院のようだった。──もちろん二人が、夜の病院に行ったことなどなかったが。
そしてむわりとした生温い空気が、今の今まで冷たい雨にさらされていたのだということを二人に思い出させてくれる。そういえば、風邪をひいたときや何かの予防接種で連れていかれる近所の小さな病院も、やけに暑かった気がする。熱のせいかとも思ったが、案外病院というところはそういうものなのかもしれない。

