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恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第4章 傘爺

患者さんなのかお見舞いの人なのかわからない数人の大人達とすれ違い、傘爺が消えた通路へと急いで向かえば、そこはエレベーターホールになっていた。ホールにはもう傘爺の姿はなく、ただ行く先を示すように、ボタンの上をオレンジの光が滑っている。外から見たとき何階建てか数えてはいなかったが、とにかくボタンはたくさんあって、詠士と二人それを眺めていれば、光は「3」で止まった。
エレベーターの乗り方は、買い物に行ったときにお母さんから教えてもらっていた。最初はどちらがボタンを押すかでケンカをして、結局行きは詠士、帰りは詩織──といった具合に交代で行うことに決めていた。
他に上階に向かう者もなく、二人だけでエレベーターに乗り込む。広い。詠士は迷うことなく「3」を押し、扉の上を見上げた。重たげな動作で扉が閉まると、今度は光が横に滑っていく。1、……2、……。ぽーん、とくぐもった音がして次に扉が開くまで、大した時間はかからなかった。
「なあ詩織。もし傘爺と話ができたら、明日学校でみんなに自慢できるかな?」
「みんな信じてくれるかな? 話したってだけじゃ、証拠がないよ」
「それは、俺達がお互いにショーニンじゃん」
「そうかなあ」
エレベーターの乗り方は、買い物に行ったときにお母さんから教えてもらっていた。最初はどちらがボタンを押すかでケンカをして、結局行きは詠士、帰りは詩織──といった具合に交代で行うことに決めていた。
他に上階に向かう者もなく、二人だけでエレベーターに乗り込む。広い。詠士は迷うことなく「3」を押し、扉の上を見上げた。重たげな動作で扉が閉まると、今度は光が横に滑っていく。1、……2、……。ぽーん、とくぐもった音がして次に扉が開くまで、大した時間はかからなかった。
「なあ詩織。もし傘爺と話ができたら、明日学校でみんなに自慢できるかな?」
「みんな信じてくれるかな? 話したってだけじゃ、証拠がないよ」
「それは、俺達がお互いにショーニンじゃん」
「そうかなあ」

