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恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第4章 傘爺


 室内はあの白んだ光に包まれ、雨の音がしていた。今まで嗅いだことのないにおいが鼻にツンと抜け、二人はコシコシと同じ仕草で鼻を拭う。
 中には全部で六つのベッドが並べられており、そのうち二つはカーテンに覆われ、三つは空っぽ。ただベッドとセットで置かれているテーブル付きの棚には、栞の挟まれた本やコップが置かれていたり、大きな布のバッグが提げられたりしていた。満員。
 その中で唯一人の姿が認められるのが、傘爺のいるベッドだった。
 詩織と詠士は顔を見合わせる。
 ずんぐりとした背中の向こうで、のんびりと手を動かしている一人のおばあちゃん。木製の丸い輪に布を張り、それに何度も何度も……繰り返し繰り返し、針を通している。
(刺繍……)
詩織は前に本で見た、挿絵に描かれた魔女のおばあちゃんを思い出す。うんと昔の外国を舞台にした、優しいファンタジーだった。
 棚にも小花の刺繍がされたカーディガンが提げられており、レース編みのショールもパッチワークの膝掛けも、そんな世界のかけらのよう。だから魔女の家に吊るされているハーブや薬草も、もしかしたらさっき嗅いだにおいに似ているのかもしれなかった。
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