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恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第4章 傘爺
 二人でベッドの横に並べば、おばあちゃんは雨粒のように大きな涙をぽろぽろと頬にこぼし、まるで抱き寄せるかのように両手をゆっくり広げる。
 先程暴れた手は、今はおそるおそるといった風に二人の湿った髪を撫で、何かを確かめるように、探るように、上下に動く。おかえりなさい、という言葉と共に繰り返されるその仕草に、詠士は少し首を傾げるように頭を動かしたが、それ以上は何もしない。
 やがていくらか落ち着いたのか、涙を拭ったおばあちゃんは、棚からタオルを取り出すと、まず詠士の頭や顔をごしごしとこすった。
「傘──そうだわ、傘、なかったのよね。こんなに濡れて……、今までどこにいたの。お母さんがどれだけ心配したと思ってるの?」
 ──お母さん? お母さん。
 一体だれと、見間違えているんだろう。
 詩織は頭の中で、自身がそう呼ぶべき存在の姿を思い浮かべる。お父さんと呼ぶべき存在の姿を思い浮かべる。目の前のおばあちゃんや傘爺と比べれば、まだずっとずっと若い。病院にも行っていない。唯一、詠士を叱りながら髪をわしゃわしゃと拭うその仕草はとても似ていたけれど。
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