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恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第1章 初髪、初鏡
***

 翌朝、神依は朝餉のあと日が昇ったのを見て風呂の支度を始める。禊は初瀬の使いとして奥社に赴き、代わりに童が部屋を温めてくれたりその後の衣の準備なども進めてくれた。
 派手さはなくとも静の美しさを醸す着物や帯。小さな色硝子が揺れる簪や、漆黒に虹色の貝の細工が施された帯留め。
 今日もまた、正月の特別な日。再び奥社に集まる巫女達も、この日だけは衣や帯を変えて、髪を結い紅を挿しては言祝ぎを交わす。
 神依が気に入った着物を選ぶと、季節や色に合わせ童が一通りのものを見立ててくれた。化粧道具も万全に整え、それから二人は日嗣に留守を任せると、風呂に下りる。
 「──綺麗だったね。それにしても、うちにあんなのがあったなんて!」
「普段は使わないもんな。一ノ兄がたまに日干ししたり手入れしてたんだけど、神依様の目に触れないようにやってたから」
「えっ、なんで?」
「そりゃあ神依様も女の人だから。見ると着たくなったり、欲しくなっちゃうだろ。やっぱりああいうのはハレの日──特別な日だけに許されるものだし、今は昔に比べると緩いけど、一ノ兄は石頭だから」
「ふふ、それは確かに。みんな、小さな髪飾りや根付けとかはしてるもんね」
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