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恋いろ神代記~神語の細~(おしらせあり)
第1章 初髪、初鏡
 しかし、そうして古き一線を守るに嫌悪の念を抱く神もまた居ない。禊はまた、そういう神々のたちも見知って華美なものは与えなかった。
 そんなふうにお喋りしながらゆっくりと朝風呂に浸かり、神依が家の方に戻った時には禊も奥社から帰ってきていた。
 「──お帰り、禊。初瀬様のお使いって何だったの?」
「それは、お部屋の方にお戻りになればお分かりいただけるかと。御令孫もそちらでお待ちです」
「日嗣様も?」
神依は小首を傾げて、禊に促されるまま自室へと向かう。
 やはり廊下は寒く、早く早くと小走りに駆けていけば、その足音が聞こえたのか日嗣が襖を開けて迎えてくれた。
「──神依」
「日嗣様?」
日嗣は何故か憮然とした表情をしていたが、それが何なのか今の神依にはもう理解できる。何か言いたいことがあるのだが、何かの理由──それは主に照れ臭さだが──から口にできず、不機嫌さに充てて代替してしまっている状態。
 自らの威厳を守り、他人に慮れと求めるそれは、権力者としてある意味正しい振る舞いかもしれなかったが……少なくともこの家、神依の前では無意味だった。
 「──日嗣様」
「……」
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